癌との闘病中の方々からご相談を受けます。
食べるもので、がんが治るわけがないと思っている人が多数です。
また、がんになったのは、食事のせいではないと思っている人もいます。
あるいは、ご自身の好きな飲み物や食べ物が原因だとは考えたくもありませんね。
では、がんの原因は何だと考えているのでしょう。
大概の人は「自分は運が悪かったから」と思っているようです。
そのような方々に対して、違った観点から、食事の影響を確認してみましょう。
/
2022年5月に公開されている論文から引用したものに注釈を入れたらどうでしょう。
この論文は、大腸がんに対して、食事から摂るフラボノイド(ポリフェノールのひとつ)を、
がん治療のために活用すべきである、と結論づけていました。
/
内容は専門的かつ生理学的なものですが、私たちの食生活と関連付けて
身近なポイントだけ紹介したいと思います。
/
がん組織が増殖・拡大している時というのは
特に炎症や免疫に関わる免疫系の細胞からさまざまな指令物質が放出されています。
そのうちの一つが、種々の増殖/成長因子です。
そして、血管内皮細胞増殖因子を受け取るVEGFRという受容体と
上皮成長因子を受け取るEGFRという受容体です。
/
従って、巷の製薬企業は、これらの受容体の働きを阻害する機序をもつ
抗がん剤を開発し、それが実際に臨床現場で広く使われています。
/
そのような抗がん剤が、がんを治癒に向かわせるのなら何の問題もありません。
しかし、がん細胞がこれらの受容体を多く発現しているとは言え、
他の健常な組織の細胞もこれらの受容体を備えていて
それによって様々な情報交換を行っています。
抗がん剤によってその受容体を無差別的に阻害してしまうと、
もともと受容体の数が少ない健常組織の細胞のほうが大きなダメージを喰らい、
健常組織が健常性を保てなくなります。
/
逆に、がん幹細胞は周囲のがん細胞や免疫細胞に守られていますから、
それらの抗がん剤は非常に届き難くなっています。
/
だからこそ、このような抗がん剤ではがんが治らないどころか
抗がん剤が切れたときに凄い勢いで反撃に出られることになります。
/
では、植物に含まれている各種のファイトケミカルはどうでしょう。
この論文においては、大腸がんの場合には、
タマネギなどに多く含まれているクェルセチン
セロリやブロッコリーをはじめとした各種の緑色野菜に含まれているルテオリン
緑茶に多く含まれているエピガロカテキンガレート
カレーなどの着色成分として広く使われているウコン中のクルクミン
ブドウの皮などに多く含まれているレスベラトロールなど、
いわゆるポリフェノールの仲間が、上述の受容体からのシグナル伝達経路における下流のタンパク質(KRASやPI3Kなど)を阻害します。
/
ただし、食品中にあって、食べる量も一度に多量に食べるわけではないため
これらのポリフェノールが毎日少しずつ
それらのタンパク質を緩く抑制することになります。
/
いわば、これらのポリフェノールは
抗がん剤と同様の役割を果たすことになるのですが
最も大きな違いは、これらのポリフェノールは人類が昔から
食べてきたものであるため、毒性を示さないように、
体が上手く逃れる術を身に付けていることです。
更には、このようなポリフェノールによって
普段からKRASやPI3Kなどのタンパク質が緩く阻害され続けることを想定して
少し多めに発現しておこうという具合に体が進化してきているのです。
/
言い換えれば、私たちの体は、これらのポリフェノールが
口から入ってくることを前提とした代謝系を備えているということです。
/
だからこそ、これらのポリフェノールが入って来なくなると、
本来なら少し抑えてくれるはずのブレーキが完璧に効かなくなり、
KRASやPI3Kなどのタンパク質が高発現して暴走し、
その結果としてがんの増殖が激しくなってしまうのです。
/
考え方としてあまり好ましくないのは、
「ポリフェノールはがんに効く」という考え方です。
/
このような捉え方をしてしまうからこそ、
「食品成分でがんが治るはずがない」という反論を生むことになります。
/
一方、好ましいと思われる考え方は、
「ポリフェノールがあって、はじめて正しく稼働するように
人類の体が進化してしまっている」ということです。
/
ビタミンやミネラルと同様に、
ポリフェノールを含めた各種のファイトケミカル(植物成分)は、
私たちにとって必須成分なのであって、
それが欠乏するからこそ生理的なバランスが崩れ、様々な病気に罹ってしまうのです。
/
ファイトケミカルは「5大栄養素」に含められていないからこそ、
多くの病人をつくってしまっているのです。
従って、5大栄養素に食物繊維とファイトケミカルを加えた
「7大栄養素」の概念を、子どものうちからしっかりと教育するべきだと思います。
(一部文章はお借りしました)